はじめに
『ONE PIECE』は、尾田栄一郎先生の豊かな想像力と創造力によって紡がれた、比類なき海賊冒険譚です。1000話以上にも及ぶこの壮大な物語は、世界中のファンを魅了し続けていますが、その魅力の根底にあるのは尾田先生の細かなこだわりに他なりません。キャラクターの一言一句から背景の一筆に至るまで、彼の細部への注意は、読者が『ONE PIECE』の世界に深く没入できる理由の一つです。この記事では、個人的に大好きな尾田先生のこだわりポイントを5つ選び、それぞれがどのように物語の魅力を高めているのかを掘り下げていきます。細部に宿る情熱と献身を通して、尾田先生が描く『ONE PIECE』の世界の奥深さを改めて感じてみましょう。
感謝するときは「ありがとう」
これはSBSにて明言された尾田先生のこだわりの一つです。
ワンピースのキャラクターは、どんな口調のキャラでも、セリフの流れとして変にならない限りは「ありがとう」と言ってもらうようにしているようです。「どうも」や「サンキュー」のように言葉を濁す様なやつは逆にカッコ悪いため、一番ストレートな「ありがとう」と言ってもらいたいとのことでした。
確かに、ゾロなんかは「サンキュー」とかって言いそうなイメージのキャラクターですが、「ありがとう」と言っていますね。
発言者がよく知らない言葉はカタカナ表記
ちょっと分かりにくいですかね。
例えば、魚人や人魚たちは「太陽」のことを「タイヨウ」と言います。ジンベエが率いていたタイヨウの海賊団もカタカナ表記ですよね。
これは、太陽の届かない魚人島で過ごしてきた魚人たちからすると太陽の存在がよく分からないものであったからだと思われます。
この様な表現は特に物語後半ではよく見かけるので、ぜひ意識して読んでみてください。
生きて動くものはすべて自分で描く
週刊連載とは、我々では想像のできないほど大変なことだと思われます。そのため、1人で毎週1話を描きあげるのは大変なので、アシスタントさんを雇い、背景やトーンなどを手伝ってもらうことがほとんどです。
尾田先生ももちろんアシスタントさんと協力して漫画を描いていますが、その中でもこだわりを発揮されています。
尾田先生は主要なキャラクターだけでなく、群衆や動物、雲、煙など、生きて動くものはすべてアシスタントさんではなく自分で描かれているらしいです。
ここでいう「生きて動くもの」とは、「生物」という意味ではなく、「動きを表現するもの」のような意味合いだと思われます。
ルフィには心理描写がない
大抵の漫画には、戦略を練ったりする際などに心理描写が描かれますよね。そのキャラクターが何を考えて行動しているのかを表現するのに有効ですが、その様な描写がルフィにはありません。
これも尾田先生のこだわりであり、ルフィは「考えるくらいなら口に出す」「行動に移す」様な読者に対して常にストレートな男であることを徹底されているそうです。
そのため、思い浮かんだことをすぐに口に出している様子がいつも描かれているのです。
ただし、唯一口に出さなかったのが、空島編で黄金の鐘を鳴らした時のクリケットへの叫びです。これは声にこそ出していませんが、心で「叫び」かけるという表現なのでOKと判断されたそうです。
「タヒね」や「コロす」といった言葉を使わない
ワンピースでは命がけの戦いも多く描かれますが、基本的には「タヒね」や「コロす」といった表現は使われていません。厳密に言えば、初期は少しだけその様な言葉を使われていましたが、お祖母様に「子供が読むものに、そのような言葉を使わないで」と言われてからはなるべく使わないようにしているそうです。そのため、「ぶっとばす」のような表現をよく見かけますね。
それでも戦いや物語の展開から緊迫感などがしっかり伝わってくることからも、尾田先生の表現の上手さが伝わってきますね。
尾田先生はこのように、子供たちが読むことを常に意識して漫画を描かれているそうです。そのため、本来は子供たちが漫画を買えるように5年以内に完結する予定だったそうです。
まとめ
尾田栄一郎先生の『ONE PIECE』に対する細かいこだわりを5つ見てきましたが、これらは氷山の一角に過ぎません。キャラクターたちが「ありがとう」と言う心温まる一言から、独自の表現方法である「カタカナ」の使用、そしてすべての動くものを自らの手で描く姿勢、ルフィの心の声を描かない選択、そして暴力的な言葉を使わせない配慮まで、これら一つ一つが『ONE PIECE』の世界をリアルで、かつ魅力的なものにしています。尾田先生のこれらのこだわりは、単なる漫画を超え、読者に深い共感と感動を与える物語を生み出しています。『ONE PIECE』が多くの人々に愛され続ける理由は、その壮大なスケールや圧倒的な冒険だけでなく、細部に宿る作者の愛と献身にあるのです。これからも尾田先生の描く『ONE PIECE』の世界を、その細かなこだわりと共に楽しんでいきましょう。